そろそろコロナも落ち着き始めたある日、新宿の美術館へ学生時代の友人と出かけることになった。何年かぶりではあるが、何度か行っているので美術館の中で待ち合わせをしたところ、新宿西口は私には迷路だった。
地下道を行けばわかりやすいと聞いたが、全然わからないので地上に出てみたら、もっとわからない。出たところは知らないビルで、警備のガードマンさんに場所を尋ねた。よほどのおのぼりさんかお年寄りだと思われたのか、丁寧に、一つ後ろのビルの前まで連れて行ってくれた。「ここですよ」と。約束の時間になんとか間に合ったが、20分後、なかなか到着しない友人から「私、迷ったみたい」とライン。聞けば、やはり目の前のビルにいたようだ。
合流した私たちは、そもそも昔、新宿に都庁はなくて、西口を出たら目指すビルはすぐにわかったし、ビルの下にあったリンクでスケートもしたよね、などと迷ったのは新宿のせいだとばかりに語り合った。
ランチは中村屋のカレーにしようと東口に出るとビルの老朽化により近くに建て替えられていた。記憶の中では、二階に上がるとサロンのようになっていて、オーナーの相馬夫妻がインドの独立運動家を匿い、後に娘さんと結婚してカレーを伝えたり、文化人として多くの芸術家をサポートしていた資料や書籍が展示してあり、学生時代の私たちは、ちょっと大人びた気分になってカレーとコーヒーを注文していたが、今はない。そして行き場を失った私たちはランチをするだけでウロウロすることとなった。
新宿は日々変化をするのだと実感した一日だった。
(受講生 風信子)